飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 ……そうだ、これからのことを考えよう。

 いつまでも凛に甘えてるわけにはいかないけど、俺がこの家を出ていくときはたぶん、〝アイツ〟のところへ行くとき。

 凛のことを思えば、本当はすぐにでも行くべきなんだ。

 ……でも、行きたくない。

 少しでも側にいたい、なんて考えてしまう自己中心的な自分に嫌気がさす。

 いっそ凛が思い切り嫌ってくれでもすれば出ていく決心がつくんだけど。

 
 と、そこまで考えたところで凛の手の力が抜ける気配がした。

 そっと目を開けると、そこにいるのはスヤスヤと健やかな寝息をたてる、天使。


「……」


 ……なんか無防備すぎて腹立ってきた。

 キスの一つでもしてやろうかな?

 ……やめとこう、さすがにそれは犯罪。

 俺の理性が仕事してるうちに、とっととこの天国みたいな地獄から抜け出さないと。
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