飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 ベッドのそばでしゃがんで凛を窺いみると、相変わらず苦しそうに涙を流している。


 ……そうだよな。

 平気なんかじゃないよな。 寂しいよな。


 優しく凛の頭を撫でてみると、凛は少し安心したように表情を緩めて、また静かな寝息を立て始める。

 ……俺の手を、握って。


「……」


 ひとまずティッシュをつまんで凛の涙を拭いてあげる。

 その表情は元の健やかな、可愛すぎる寝顔。


 ……クッソ。 抱きしめたろか?


 ちらりと見たベッドのサイドボード上の目覚まし時計は、0時15分を指している。

 いつもの俺なら爆睡の時間。 殴っても蹴られても起きないはずの時間。

 こんなに疲れてるのに眠くならないのは、猫の性質か、それともこの天使みたいな悪魔と戦う煩悩のせいか。


 なんにせよ、心臓の音がずっとうるさくて、困る。
 
 落ち着けよ、おい。

 俺は胸を押さえて、なんとか鎮めようと試みる。


「……はー……」


 俺はベッドの縁に頭をボスッと置いて、床に向かってため息をついた。
 

 ……ムリ。

 好きな子に手を握られて、冷静でいられる方がどうかしてる。


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