飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。
 驚いてふりむくと、そこには……

 私の制服の裾を掴む、中志津くんがいた。


「え……?」


 黒髪の隙間から覗く静かな瞳が、真っ直ぐに私に向けられている。

 トレードマークの無表情は、中志津くんがどんな気持ちで私の制服の裾を持っているのか、教えてくれそうにない。


 え?え?なんで中志津くん、私を捕まえてるんだろう?

 班決めの時間に声をかけるってことは、班を組もうってこと?

 いやいや、私と中志津くんがまともに喋ったのってこないだみんなの前で(しん)について聞かれたときくらいだし、中志津くん女の子とあんまり話さないって有名だし……

 きっと何か用事があるんだ。


「中志津くん、どうしたの?」

「……」


 中志津くんはなにか言おうとしているのか、しばらく私を見つめたままかたまっている。


「……」

「……」

「……」


 あまりにも沈黙が続くので、どうしたら良いか分からずに、中志津くんを見返してオロオロするしかできない。

 私たちをよそに、周りにはどんどんかたまりができていってる。
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