Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~
数歩歩いて彼は止まると顔だけを私に向ける。

「早くしろよ。置いていくぞ」


呆れた声でそう言った。唖然としていたが、どんどん進んでしまう彼の背中を追いかけて私は走り始めた。


恭介さんはいつものようにワープをするでもなく歩いて屋敷まで案内してくれた。屋敷は街から歩くにしては少し離れていて、木々に覆われた森の中に位置している。


それでも街や学校へ行けない距離では無いので、歩くのを頑張ろうと決意した。


「こんな広いお部屋に住んでもいいんでしょうか……」


改めて恭介さんのお屋敷に来るとさすが桜坂財閥、西洋風の大きな屋敷だ。その中の2階にあるお部屋にどうやら住まわせてくれるようだった。


家具はなく殺風景であるが、屋根のある場所で寝泊まりできるだけでありがたいから問題ない。この屋敷は広いからお掃除に身が入りそうだ。


__コンコン

「ああ、入ってくれ」

荷物を置いていると扉がノックされ、彼が返事をする。誰だろう、と見ると大小様々なダンボールを抱えた男性たちが続々と入ってきて中身を広げていく。


手際よく動いて木材を組み立てたり、それにソファなんかも運搬してくる。


「君の好みに合うかわからないけど使ってくれ。足りないものはまた後で買い足そう」
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