Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~
「新月の日、アイツは不老不死の呪いをかけた神に許しを請い続けるんだ。もう、死なせてくれと」


夜叉さんは表情を崩すことなく淡々と話を続ける。


「それでもアイツの元に恋人の生まれ変わりが現れることはなかった」


__だけど


「やっと現れたんだよ、アイツを救える世界に1人だけの存在が」


「だれなんですか、それは」


「恭介と同じ黒薔薇を鎖骨に刻む人物って言ったらもうわかるだろ」


夜叉さんは自分の鎖骨を指さす。私も自らのアザだと思っていた薔薇の模様を撫でた。


「わたし、が……生まれ変わりですか。どうやったら呪いは解けるんです?!」


「黒薔薇の呪いに口付けすればいい。そしたらすぐにアイツは救われるさ」


「そんなことで。恭介さんも私に気づいていたはずなのにどうして言わなかったんでしょうか」


「そりゃ簡単な話だ。呪いが解けたら最後、アイツは死んじまう」


死んじゃうって……。夜叉さんは眉を顰めて言った。


「恭介を救えるのはオマエしかしなくて、殺せるのもオマエしかいない」


まあせいぜい考えな、と言い残し夜叉さんは部屋から出て行った。私はその場から動くことができなかった。


つい終秒前まで助けられると思っていたのに、その道を進めば彼は死んでしまう。
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