Flower~君の美しい記憶の中で今日も生きていたい~
どれだけ出血しても痛くても、彼は死ねない。

一歩また一歩と近づく。


周りの人たちが自分を置いて死んでいく恐怖。寂しさ、孤独。


不老不死の黒薔薇の呪い。

命を奪った罰を今度は誰かを助けることで償ってきたんだよね。


声を噛み殺している彼が身を預けるベッドに腰を下ろす。背中側に座ったから恭介さんの顔は見えない。


初めて会った時彼のことを恐れ知らずな人だと思った。だけどこの人は誰よりも恐怖を知っている。


驚かせないように優しく恭介さんの背に触れた。今度は拒絶しなかった。


ぽろぽろと私の目から涙が流れ頬を伝ってベッドに落ちる。もう顔だってきっとこのシーツのようにぐしゃぐしゃだ。


「……恭介さんは眠ってるだろうから、これはひとりごと」


彼の大きな背中に額を預ける。


「好き、好きなの。恭介さんと、生きたいんです」


そう泣き叫んで、彼のことを抱きしめた。彼がほんの少し身じろぐ。小さな拒否。それでも受け入れてくれた。


「大好き……あいし、キャッ」


視界があっという間に反転し、背中はベッドに目の前には苦しそうに息をする恭介さんに変化していた。


目と鼻の先で見つめる彼の瞳は熱を帯びている。私に覆い被さり両手を優しく掴まれる。
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