私を導く魔法薬

森の入口で

「気付いたのはこのあたりなの?」

 二人は周りを見渡しながら森の入口にやってきた。

「そうだ。しかしもうどうにもならなかった。勝手に自分の周りに吹雪を起こしたまま彷徨うしかなかったんだ…」


 彼の状況はまるで自分のよう。
 自分の境遇のせいで、誰もが自分から離れていく…

 彼がどんなに一人に慣れていようと、その状況では誰も近寄るはずはない。

 大体の者は先程の証言のように、巻き込まれたくはないと彼を避ける。
 しかし血気盛んなものからすれば、敵意を持たない相手でも攻撃をしてくることも十分に考えられる。
 彼の記憶が戻らないため本当のところはわからないが。

 ダリアはかつて他の者にされた仕打ちを思い出した。

「…運が悪くなくて、本当に良かったわ…」

「?」

 彼女の呟きに、彼は首を傾げた。


 突然、吹雪が巻き起こりどこからともなく男の声がする。

『遅かったな』

「誰!?」

 ダリアは辺りを見回す。しかし彼は彼女の前にスッと進み出、警戒しながら持っていた剣の柄にそっと手を掛けた。

『娘の騎士気取りか?無理もない。もう洗脳も解けているようだからな。ご苦労だった、もう一度氷の兵に変えてやろう』

 何の感情も見えないその言葉に彼女は怒りを覚えた。

「ふざけるんじゃないわ!あんたのせいね?彼がこうなったのは!!」

 ダリアは感情のままに声を張り上げる。

「魔女…!」

 剣士が彼女を制した。

『目的はお前だ、魔女ダリア。その男はただの人形。後で氷の番兵に戻してやる。さあこちらへ』
< 11 / 46 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop