私を導く魔法薬

魔王の考え

 この土地に移り住み、当時の魔王から王座を譲り受けた者の血筋を継ぐ“今代”の魔王がこちらをまっすぐに見つめている。

 玉座の魔王を前に頭を静かに下げる彼とは反対に、ダリアは何とか早く魔王の誤解を解こうと一歩進み出て話しだした。

「はじめまして、魔女のダリアです…!魔王様、彼のことについて聞いていただきたいことがあって参りました…」

 魔王を前に、さすがに相手慣れをしていないダリアもいつもの威勢は出てこない。
 ただ彼女は必死に魔王の、感情を表さないその表情を見ながら続ける。

「魔王様…恐れながら彼は、氷の魔人の戯れによって操られ、記憶喪失になってしまったようなんです…!私は彼を診ていて悪意を持っているようには思えなかった…それに彼を見ての通り、魔力はほとんどないんです!」

 彼女は強く息を吸い、そしてまた言った。

「魔王様、お願いです…!!どうか彼に酌量の余地を…!」

 黙って聞いていた魔王は、フッ、と笑うように息を漏らした。

「お前の一族は変わらぬというな…。昔からほそぼそと相手のために尽くすことをする。ことにダリア、そのことに関してだけは、お前は特に先代王妃によく似ているようだ」

 魔王は立ち上がり、真っ直ぐに彼女を見た。
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