私を導く魔法薬
 しかし祈る気持ちも虚しく、彼から帰ってきた言葉でダリアは現実を突きつけられる。

「俺の方は全てを思い出したんだが、なぜか体に稲妻が走るような妙な感じがする。気分が昂ぶると風もたまに巻き起こるようだ。それにも今は慣れては来たようで、少し操れるようにまでなってきた。悪いが動けるようになってからでいい、診てくれないか?」

バタン!!

 ダリアは急ぎ戸を開けて家を飛び出し、まだろくに彼の顔を見ないままに彼のすぐそばで目をつぶり集中をする。

 …やはり彼から感じる魔力が増している。

 彼の中の魔力は人間に近いほど感じない微量なものから覚醒し、副作用のせいなのか純魔族と変わらないほどのものになっていたのだった。

「…私、なんてことを……」

 ダリアは絶望のあまり膝から崩折れた。

 すでに彼は魔族と変わらない。
 元々魔族との混血だったのだから、魔力を操れるようになるのは当たり前。
 しかも彼の人間らしい姿を保ったまま…

 彼女は涙をこらえ、地面につくほど頭を下げたまま許しを請うしかなかった。

「…許し、て…許して……ごめんなさい、私……」

 そんなダリアを彼はそっと抱き抱え、片手で彼女の溢れ出した涙を拭う。

「何を謝る?俺はもう大丈夫だ、記憶も戻った。お前さえ平気ならそれでいい。俺も約束通り礼を言い、金を払わなければな」

 そう返す彼の表情は晴れやかだった。

 しかしダリアは喜ぶことなどできない。
 人間に近い姿で魔族として生きる中途半端な自分が、今までどれだけ悲しい思いをしてきたことか。

 それを彼にまでそれを強いることになってしまったのだから。
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