私を導く魔法薬
 ダリアは上の空のまま夜を過ごし、国の者たちが寝静まった昼前に何とか浅い眠りにつき、日が沈む頃に目が覚めた。

 彼女は彼の言った言葉が気にかかっていた。

 自分は何もしないまま、この森でこれからも過ごすのだろうか。
 失敗こそしたがせっかく彼の手助けを自分なりにする事ができたのに、また誰にも相手にされず、たった独りで暮らして…

「…じゃあ私も見つけてみせるわ、自分の居場所をね…!」

 人族の身で魔族の国に渡ってきたものは今までいないとされてきた。

 しかし彼は勇敢にも自分自身を知るために魔族の国に足を踏み入れた。
 魔人に操られ記憶を失うハプニングに見舞われながらもダリアを信じ、行なった治療の後遺症すらも受け入れて生きていく決心をしたのだから。

 自分も負けてはいられない。

「…そして、いつかあんたに見せつけてやるんだから…!」


 さっそく家の荷物をまとめ始める。
 そして空を飛ぶ三つのホウキを束にしてほとんどの荷物を括り付け、すっかり旅立つ準備を整えた。

 もう旅立とう。
 そう思ったその時、あの子鬼がいつの間にか彼女の近くまで来ていた。

「ダリア、どこかに行くのか…?あのおっちゃんは?」

 呆然としながら子鬼は彼女に尋ねる。

「彼は旅に出たわ」

 ダリアは荷物を確認するふりをしながらそう答えた。

「…なあ、その…ありがとう…。おいら、ダリアにキズをなおしてもらってさ…今日は礼を言いに来たんだ」

 子鬼の礼に、ダリアはすぐさま挟むようにして言った。

「あんたの傷はもう治るわよ。私ももう旅に出るの。もうここには戻っては来ない…」

「え……」

 会話が途切れ、子鬼と彼女の間には少しの沈黙が訪れる。
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