本当の悪役令嬢は?
アドリーヌの衝撃を受けた顔をセドリックは申し訳なさそうに受け止め、ミリアンは泣いた顔を隠しつつ笑う。
「アドリーヌ。君は我が国ペルリアンの将来の王妃に相応しくない。今回の調査をすべて国王陛下報告し、オベール侯爵を交え話し合いをした。――結果が『婚約破棄』と『極刑』だ」
セドリックはミリアンと視線を合わせ、笑みを作る。彼女も涙を拭いながら嬉しそうに微笑みを返した。
「……ふっ、妹の殺害未遂のみで『極刑』とは思いもよりませんでしたわ。わたくしは他にそれほどの大罪を犯したというのでしょうか?」
「『オベール家の名を汚した』のが許せないそうだ」
「なるほど……父の言いそうなことですこと。平民の召し使いに手をつけて子を孕ませたのは不名誉なことではないのかしら?」
『平民の召し使い』とはもちろんミリアンの母親を差している。それを言っただけでも非難の嵐だ。
「妻は慎ましやかに夫の意見に従うのが貴族」
「婚姻は家同士の結束の証で、その後の恋愛は男女とも貴族の中では当たり前」と周囲は口々に「当然だ」と囁きあう。
「――お待ちください」
またしてもミリアンが声を上げた。
「どうか、お姉さまの私への罪はやめてください。……私のために人が、しかも姉が死ぬなんて耐えられません……!」
ミリアンは国王陛下にむき直し、ドレスを広げ、可愛らしく膝をつく。貴族令嬢らしいものではないがある意味、彼女にはよく似合う態度だ。
それからわざとらしく両手を祈る形にして国王を見上げる。
本来なら国王が了承するまで顔を上げてはいけないが、ミリアンは自分が咎められることはない、とわかっている様子だ。
「国王陛下。どうか私に免じて温情な措置をお願いします。もっと軽い罪を……!」
そう泣きながら訴えた。
「ううむ……罪状に関しては、其方の親である侯爵とまた話し合わなくてはならぬ。では、決まるまでアドリーヌ・オベールは軟禁を命じる」
国王陛下の言葉で断罪はいったん終わりを告げた。
「アドリーヌ。君は我が国ペルリアンの将来の王妃に相応しくない。今回の調査をすべて国王陛下報告し、オベール侯爵を交え話し合いをした。――結果が『婚約破棄』と『極刑』だ」
セドリックはミリアンと視線を合わせ、笑みを作る。彼女も涙を拭いながら嬉しそうに微笑みを返した。
「……ふっ、妹の殺害未遂のみで『極刑』とは思いもよりませんでしたわ。わたくしは他にそれほどの大罪を犯したというのでしょうか?」
「『オベール家の名を汚した』のが許せないそうだ」
「なるほど……父の言いそうなことですこと。平民の召し使いに手をつけて子を孕ませたのは不名誉なことではないのかしら?」
『平民の召し使い』とはもちろんミリアンの母親を差している。それを言っただけでも非難の嵐だ。
「妻は慎ましやかに夫の意見に従うのが貴族」
「婚姻は家同士の結束の証で、その後の恋愛は男女とも貴族の中では当たり前」と周囲は口々に「当然だ」と囁きあう。
「――お待ちください」
またしてもミリアンが声を上げた。
「どうか、お姉さまの私への罪はやめてください。……私のために人が、しかも姉が死ぬなんて耐えられません……!」
ミリアンは国王陛下にむき直し、ドレスを広げ、可愛らしく膝をつく。貴族令嬢らしいものではないがある意味、彼女にはよく似合う態度だ。
それからわざとらしく両手を祈る形にして国王を見上げる。
本来なら国王が了承するまで顔を上げてはいけないが、ミリアンは自分が咎められることはない、とわかっている様子だ。
「国王陛下。どうか私に免じて温情な措置をお願いします。もっと軽い罪を……!」
そう泣きながら訴えた。
「ううむ……罪状に関しては、其方の親である侯爵とまた話し合わなくてはならぬ。では、決まるまでアドリーヌ・オベールは軟禁を命じる」
国王陛下の言葉で断罪はいったん終わりを告げた。