本当の悪役令嬢は?
 ◇ ◇ ◇

 アドリーヌはオベール家に戻り、自分の部屋に閉じ込められた。
 
 部屋から出てはいけず、食事も部屋で摂っていた。
 やることもなくアドリーヌは暇つぶしに読書をし、たまに窓の外に目をやる。
 
 昨日の断罪がまるで夢のようだ。静かで穏やかで。
 でも、これは嵐の前の静けさだとわかっていた。
 
 外から掛けられた鍵の開く音がし、アドリーヌは窓からそちらへ視線を移す。
 
 入ってきたのはミリアンだった。
 ミリアンはいつもの可愛らしい笑みを浮かべ、アドリーヌに近づく。

「お姉さまと二人きりで話したいの。部屋の外で待っててくれる?」
 ミリアンはともに入ってきた兵士に愛想よく告げる。

「しかし、二人きりで会うのは危険です。どうかお側にいることをお許しください」
 兵士は食い下がる。普通に考えれば当たり前だ。アドリーヌは『危険な犯罪者』と周囲に認定されている。

「相手は私と同じ女性よ? それにそういった危険な物はすべて没収してあるでしょう? 大丈夫よ」
「しかし」
「お願いよ」
 
 ミリアンの上目遣いの「お願い」にあっさり陥落した兵士は「何かございましたらすぐに呼んでください」と、頬を緩め部屋から出て行った。
 
 ミリアンは花のような笑みを浮かべながらアドリーヌの隣に座る。
 アドリーヌは本を閉じるとミリアンを見つめた。

「貴女の計画通りに進んでいるようね、ミリアン」
「ええ、アドリーヌ……いえ、ノエルお義兄様」
 
 ミリアンは蕩けそうな顔をして「ノエル」と呼んだ彼の肩に頭を乗せた。



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