キミの翼が羽ばたく時。
「この部屋、気兼ねなしにつかっていいから!今日からここは雫の部屋!」
翼がニコッと笑う。
「自分の部屋……」
今まで無かった自分の居場所がみつかった気がして涙がこぼれてしまった。
「雫……?」


…私はお父さんが死んだ時、泣かなかった。
決して無理をしていたわけじゃない。
ただ生んでくれた親なだけで、それ意外の関係はなかった。
でも私にとって、それ以上の関係だったんだ。

胸が痛かった。
その時、瞳から涙はこぼれていないのに、心がないていた。
お父さんの記憶なんて、ほとんどない。
幼稚園の時に別れたっきりだったから。

でも、どこか暖かい大切な思い出だった。
だから心がいたんだんだ。
今私の家族は、翼だけ。

でも翼は私に居場所をくれた。

普通と言えば普通だ。
家族が同居しているだけだ。
中学生でお金もない私を、保護してくれているだけだ。
変だとおもうけど、やっぱり居場所がほしかったんだ。

< 6 / 71 >

この作品をシェア

pagetop