キミの翼が羽ばたく時。
この世に産まれたことに感謝したのは初めてだった。


「どうしたの?」
翼が私の背中をさする。
「……うんん、何でもないよ!ただ、ちょっと嬉しかっただけ!」
私は瞳を潤わせる涙を指先でふいた。
指先に止まった一滴の涙が、手をつたって床におちる。

「これからは、ここが居場所と思えばいい。親のこと、大変だったな。
でも、もう離れたりしない。だから安心していいんだよ。」
翼の胸が、私をすっぽりと包み込む。
「つ……ば…さ……ねぇ、ちゃっぱりお兄ちゃんって呼んでいい?」
再び涙が頬をつたう。
何で泣くのかわからなかった。
自分の弱さが恥ずかしい。
でも、悲しい涙じゃなかった。


産まれて初めて幸せだったから、泣いたんだ。


「うん、いいよ。」




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