私が仕えるお嬢様は乙女ゲームの悪役令嬢です
14 役者は揃った?
「じゃあコリンヌ、行ってくるわ。今日は式の後、オリエンテーションだけだからすぐに戻るわ」
「お嬢様、フランシス殿下と一緒にお食べになられてはいかがですか? 学園の食堂も今日から利用できるはずです」
お嬢様に付き添って学園の校門前で別れ際、お昼の誘われたので、やんわりと王子との交流を持つように諭した。
「コリンヌと一緒がいいわ」
「もっと殿下と交流をもたれないと、そのうち婚約破棄されてしまいます」
冗談ではなく、このままだと本当にそうなりかねない。
しかし、ゲームではもっと王子に対して執着心を見せ、彼が行くところには何処にでも現れ、生徒会にまでお仕掛け(生徒会は基本生徒会メンバーのみ立ち入りを許される)、殿下の横は譲らなかった。
けれど、婚約が決まってからも、お妃教育で王宮には行くが、呼び出させるまでは側にも行こうとしていなかったらしい。
執着心がなければ、嫉妬で狂うこともないだろうが、冷めた関係なのは変わらない。
「あ、あの、入学式の会場はどこでしょうか」
寮に戻ろうとした道すがら、そんな声が聞こえて振り返った。
「あ」
思わず声が漏れた。
淡いピンクベージュのコットンキャンディのようなフワフワな髪に、大きなビジョンブラッドの瞳の少女が困り顔で立っていた。
(ヒロインだ)
ゲームだから、プレイヤーが好きに名前を変えられるけど、最初の設定はキャロラインという名前だった。
「あ、あの…入学式の、」
「わ、私にお尋ねですか?」
一瞬放心状態になっていた私に、彼女が再び声をかけてきた。
「はい。入学式が行われる講堂はどちらですか? 広くて迷ってしまって」
コテンと可愛らしく小首をかしげる。
(え、ここは遅刻しそうになって王子と出会うのでは?)
「あ、あの、この道…私が今来た場所を進んでください」
今来た道を真っ直ぐ指差す。その方向を彼女が一度見て、それから「ありがとうございます」と、頭を下げてから歩き去った。
「え、待って、今の王子との出会いイベントだよね」
ヒロインは王子の他に、騎士団長の息子、宰相の息子、王宮筆頭魔法使いの息子、隣国から留学してきた王子の五人の中から恋の相手を選択し、ストーリーを進める。
入学式前の道に迷うところからストーリーが始まる。
最初は五人平等に親密度があがる。そして色々な選択をしていく中で、攻略対象を決める。
悪役令嬢アシュリーは、初期の段階からヒロインに辛く当たる。
それは入学式の場所まで王子が彼女をエスコートしたからだ。
「もしかしたら、この先で王子に会うのかしら」
私は気になって、彼女が歩いていった方向へと戻って行った。
「あ」
少し行った先で、見た光景に驚いて思わず影に身を潜めた。
(王子だ)
アシュリーお嬢様と王宮に行った際、何度か顔を見た。それに、一度見たら忘れない。
後ろにひとつに束ねた生粋の黄金色の長い髪と、鼻筋が通った美しい顔立ち、そして透き通ったサファイアブルーの瞳にすらりとした体躯。
フランシス殿下は、まさに乙女ゲームの王子のテンプレ通りの人物だった。
性格も真っすぐで、不正は断固として許さない面がある。
一方悪役令嬢は、己の欲望を貫き通すために、ヒロインを虐げたり彼女を庇う人間にも容赦なく手を下す。
それゆえ悪役令嬢であるアシュリーに対して、厳しい追求をするのだ。
そしてその手足になるのが私だった。
(え、待って、どういうこと?)
でも、目の前の状況は、王子とヒロインが一対一じゃない。
王子のそばにはなぜかお嬢様もいる。
そしてあの背の高い赤い髪の男性は、騎士団長の息子のオーガスト・ロドシキだ。
ここは王子とヒロイン、二人きりじゃないの?
密かに様子を覗っていると、ヒロインは王子たちに一礼し、挨拶を交わしている。
そしてなぜか王子がヒロインの手を取り、二人は熱い視線を交わしている。
それに対してお嬢様は何も言わない。
「え、まさかもう。恋に落ちたの?」
展開が早すぎる。それに何故お嬢様が一緒にいるのだろう。
四人は私が呆然としている間に遠ざかって行った。
「どういうこと? シナリオではヒロインと悪役令嬢が絡むのはもう少し王子と親密度を上げてからなのに」
それにあの四人の様子は、前から知っているような雰囲気だった。
「やっぱりシナリオが変わっている?」
それしか考えられない。
アスラン様もシナリオにはなかった。お嬢様の度々起こる発作や病気も。
そして仲睦まじく歩く王子とヒロイン。それを取り巻くお嬢様は、本来ヒロインと敵対する側だ。
シナリオが変わったとして、この先にはどんな展開が待っているというのだろうか。
「お嬢様、フランシス殿下と一緒にお食べになられてはいかがですか? 学園の食堂も今日から利用できるはずです」
お嬢様に付き添って学園の校門前で別れ際、お昼の誘われたので、やんわりと王子との交流を持つように諭した。
「コリンヌと一緒がいいわ」
「もっと殿下と交流をもたれないと、そのうち婚約破棄されてしまいます」
冗談ではなく、このままだと本当にそうなりかねない。
しかし、ゲームではもっと王子に対して執着心を見せ、彼が行くところには何処にでも現れ、生徒会にまでお仕掛け(生徒会は基本生徒会メンバーのみ立ち入りを許される)、殿下の横は譲らなかった。
けれど、婚約が決まってからも、お妃教育で王宮には行くが、呼び出させるまでは側にも行こうとしていなかったらしい。
執着心がなければ、嫉妬で狂うこともないだろうが、冷めた関係なのは変わらない。
「あ、あの、入学式の会場はどこでしょうか」
寮に戻ろうとした道すがら、そんな声が聞こえて振り返った。
「あ」
思わず声が漏れた。
淡いピンクベージュのコットンキャンディのようなフワフワな髪に、大きなビジョンブラッドの瞳の少女が困り顔で立っていた。
(ヒロインだ)
ゲームだから、プレイヤーが好きに名前を変えられるけど、最初の設定はキャロラインという名前だった。
「あ、あの…入学式の、」
「わ、私にお尋ねですか?」
一瞬放心状態になっていた私に、彼女が再び声をかけてきた。
「はい。入学式が行われる講堂はどちらですか? 広くて迷ってしまって」
コテンと可愛らしく小首をかしげる。
(え、ここは遅刻しそうになって王子と出会うのでは?)
「あ、あの、この道…私が今来た場所を進んでください」
今来た道を真っ直ぐ指差す。その方向を彼女が一度見て、それから「ありがとうございます」と、頭を下げてから歩き去った。
「え、待って、今の王子との出会いイベントだよね」
ヒロインは王子の他に、騎士団長の息子、宰相の息子、王宮筆頭魔法使いの息子、隣国から留学してきた王子の五人の中から恋の相手を選択し、ストーリーを進める。
入学式前の道に迷うところからストーリーが始まる。
最初は五人平等に親密度があがる。そして色々な選択をしていく中で、攻略対象を決める。
悪役令嬢アシュリーは、初期の段階からヒロインに辛く当たる。
それは入学式の場所まで王子が彼女をエスコートしたからだ。
「もしかしたら、この先で王子に会うのかしら」
私は気になって、彼女が歩いていった方向へと戻って行った。
「あ」
少し行った先で、見た光景に驚いて思わず影に身を潜めた。
(王子だ)
アシュリーお嬢様と王宮に行った際、何度か顔を見た。それに、一度見たら忘れない。
後ろにひとつに束ねた生粋の黄金色の長い髪と、鼻筋が通った美しい顔立ち、そして透き通ったサファイアブルーの瞳にすらりとした体躯。
フランシス殿下は、まさに乙女ゲームの王子のテンプレ通りの人物だった。
性格も真っすぐで、不正は断固として許さない面がある。
一方悪役令嬢は、己の欲望を貫き通すために、ヒロインを虐げたり彼女を庇う人間にも容赦なく手を下す。
それゆえ悪役令嬢であるアシュリーに対して、厳しい追求をするのだ。
そしてその手足になるのが私だった。
(え、待って、どういうこと?)
でも、目の前の状況は、王子とヒロインが一対一じゃない。
王子のそばにはなぜかお嬢様もいる。
そしてあの背の高い赤い髪の男性は、騎士団長の息子のオーガスト・ロドシキだ。
ここは王子とヒロイン、二人きりじゃないの?
密かに様子を覗っていると、ヒロインは王子たちに一礼し、挨拶を交わしている。
そしてなぜか王子がヒロインの手を取り、二人は熱い視線を交わしている。
それに対してお嬢様は何も言わない。
「え、まさかもう。恋に落ちたの?」
展開が早すぎる。それに何故お嬢様が一緒にいるのだろう。
四人は私が呆然としている間に遠ざかって行った。
「どういうこと? シナリオではヒロインと悪役令嬢が絡むのはもう少し王子と親密度を上げてからなのに」
それにあの四人の様子は、前から知っているような雰囲気だった。
「やっぱりシナリオが変わっている?」
それしか考えられない。
アスラン様もシナリオにはなかった。お嬢様の度々起こる発作や病気も。
そして仲睦まじく歩く王子とヒロイン。それを取り巻くお嬢様は、本来ヒロインと敵対する側だ。
シナリオが変わったとして、この先にはどんな展開が待っているというのだろうか。