私が仕えるお嬢様は乙女ゲームの悪役令嬢です
19 悪役令嬢の正体
私は無我夢中で離れに向かった。
「お、お嬢様、お嬢様、どこですか?」
生け垣を突き破り、木の枝で傷つきながらも必死で敷地に入り、間取りを知らない離れの中に入った。
離れは一階建てなので、それほど部屋数はない。
多分ここだろうと思った部屋に走り込んだ。
「お嬢様、アシュリー…さ、ま?」
しかし、そこにいたのは、お嬢様ではなかった。
私が飛び込んだ部屋にいたのは、長い髪を後ろでひとつに纏めた男性だった。
「コリンヌ?」
その人は、白いシャツとゆったりとしたスラックスを履き、自分の部屋にいるように寛いでソファーに座っていた。
そしてなぜか私の名前を呼んでいる。
「あなたは?」
お嬢様に似ているとも思うが、髪の色はずっと濃いシルバーで、明らかに男性だ。
「アスラン…様?」
かつて一度見かけた少年の名を呟いた。
「いや、私はアシュレイだ。その怪我、どうしたの?」
「アシュレイ、様? あの、アシュリーお嬢様はどこに?」
怪我のことを聞かれたが無視する。彼が誰でもいい。奥にもうひとつある部屋かと、そちらへ向かう。
「お嬢様」
しかし、寝室であるその部屋は、今まで誰かが寝ていた形跡はあるが、ベッドはもぬけの殻だった。
「アシュリーを探しているの?」
立ち上がって近づいてきたアシュレイと名乗った青年が問いかける。
「そうです。お嬢様はどこに?」
「目の前にいるよ」
青年は手を広げてそう告げる。
「ふざけないで、あなたはどう見ても男性ですよね。私が探しているのはアシュリーお嬢様です。この家の一番目のお嬢様で」
「だから私がそうだ。アシュレイ・トレディール。またの名をアシュリー・トレディールだ。コリンヌ」
「な、何を」
「アシュレイ様、どうなさ、まあ、コリンヌ。あなたどうやってここに?」
ふいにメイド長が現れ、私がいることに驚いた。
「メ、メイド長、お嬢様は? アシュリー様はどこに?」
私が尋ねると、メイド長はちらりと青年の方を見る。
彼が頷いたので、メイド長は「わかりました」と頷いた。
「よく聞いてコリンヌ、今、あなたの目の前にいるのがアシュリー様よ」
「え!」
思い切り驚いて彼を見て、それからメイド長を見る。
「か、からかって…」
「私がそんなことをすると思いますか?」
真面目で融通が効かない、しかし有能なメイド長が、そんな冗談を言うとは思えない。
「でも、アシュリー様は、この人は…」
頭が混乱して理解が追いつかない。
アシュリー様は令嬢で女だ。でも、この人はどう見ても男だ。
「とにかく座ろう。怪我の手当をしないと、メイド長、薬箱を持ってきて」
混乱している私の手を引いて、彼はソファーへ座らせ、メイド長が薬箱を持ってきた。
「ありがとう、後は私がするから、暫く二人にして。それから、お父様たちにも、コリンヌに本当のことを伝えるからと、伝えてきて」
「わかりました。でも、大丈夫ですか?」
「ふふ、さすがに私も場を弁えているよ」
メイド長が何を心配しているのかわからないが、彼女が部屋を出ていき、私は彼と二人きりになった。
「だめだよ。これ以上体に傷をつけたら」
「あなたがアシュリー様ってどういうことですか?」
整った顔立ちの彼の顔を間近で見つめ、アシュリー様の面影が確かにあることを確認する。
まだ納得はいかないが、彼もメイド長も嘘を言っているわけではなさそうだ。
でも、アシュリー様は女だった。
年頃になっても胸はぺったんこだったが、そういうのは個人差がある。
私の膨らんだ胸を時折見つめていたのは、羨ましく思っているのだと思っていた。
「トレディール家は呪われているんだ」
「え?」
「正確には、トレディール家の男子が呪われている」
そして彼は、私に語りだした。
「お、お嬢様、お嬢様、どこですか?」
生け垣を突き破り、木の枝で傷つきながらも必死で敷地に入り、間取りを知らない離れの中に入った。
離れは一階建てなので、それほど部屋数はない。
多分ここだろうと思った部屋に走り込んだ。
「お嬢様、アシュリー…さ、ま?」
しかし、そこにいたのは、お嬢様ではなかった。
私が飛び込んだ部屋にいたのは、長い髪を後ろでひとつに纏めた男性だった。
「コリンヌ?」
その人は、白いシャツとゆったりとしたスラックスを履き、自分の部屋にいるように寛いでソファーに座っていた。
そしてなぜか私の名前を呼んでいる。
「あなたは?」
お嬢様に似ているとも思うが、髪の色はずっと濃いシルバーで、明らかに男性だ。
「アスラン…様?」
かつて一度見かけた少年の名を呟いた。
「いや、私はアシュレイだ。その怪我、どうしたの?」
「アシュレイ、様? あの、アシュリーお嬢様はどこに?」
怪我のことを聞かれたが無視する。彼が誰でもいい。奥にもうひとつある部屋かと、そちらへ向かう。
「お嬢様」
しかし、寝室であるその部屋は、今まで誰かが寝ていた形跡はあるが、ベッドはもぬけの殻だった。
「アシュリーを探しているの?」
立ち上がって近づいてきたアシュレイと名乗った青年が問いかける。
「そうです。お嬢様はどこに?」
「目の前にいるよ」
青年は手を広げてそう告げる。
「ふざけないで、あなたはどう見ても男性ですよね。私が探しているのはアシュリーお嬢様です。この家の一番目のお嬢様で」
「だから私がそうだ。アシュレイ・トレディール。またの名をアシュリー・トレディールだ。コリンヌ」
「な、何を」
「アシュレイ様、どうなさ、まあ、コリンヌ。あなたどうやってここに?」
ふいにメイド長が現れ、私がいることに驚いた。
「メ、メイド長、お嬢様は? アシュリー様はどこに?」
私が尋ねると、メイド長はちらりと青年の方を見る。
彼が頷いたので、メイド長は「わかりました」と頷いた。
「よく聞いてコリンヌ、今、あなたの目の前にいるのがアシュリー様よ」
「え!」
思い切り驚いて彼を見て、それからメイド長を見る。
「か、からかって…」
「私がそんなことをすると思いますか?」
真面目で融通が効かない、しかし有能なメイド長が、そんな冗談を言うとは思えない。
「でも、アシュリー様は、この人は…」
頭が混乱して理解が追いつかない。
アシュリー様は令嬢で女だ。でも、この人はどう見ても男だ。
「とにかく座ろう。怪我の手当をしないと、メイド長、薬箱を持ってきて」
混乱している私の手を引いて、彼はソファーへ座らせ、メイド長が薬箱を持ってきた。
「ありがとう、後は私がするから、暫く二人にして。それから、お父様たちにも、コリンヌに本当のことを伝えるからと、伝えてきて」
「わかりました。でも、大丈夫ですか?」
「ふふ、さすがに私も場を弁えているよ」
メイド長が何を心配しているのかわからないが、彼女が部屋を出ていき、私は彼と二人きりになった。
「だめだよ。これ以上体に傷をつけたら」
「あなたがアシュリー様ってどういうことですか?」
整った顔立ちの彼の顔を間近で見つめ、アシュリー様の面影が確かにあることを確認する。
まだ納得はいかないが、彼もメイド長も嘘を言っているわけではなさそうだ。
でも、アシュリー様は女だった。
年頃になっても胸はぺったんこだったが、そういうのは個人差がある。
私の膨らんだ胸を時折見つめていたのは、羨ましく思っているのだと思っていた。
「トレディール家は呪われているんだ」
「え?」
「正確には、トレディール家の男子が呪われている」
そして彼は、私に語りだした。