私が仕えるお嬢様は乙女ゲームの悪役令嬢です
4 階段事件発生
それから一ヶ月は何事もなく過ぎた。
お嬢様は少し変わっていて、おままごとなどはしない。私も四歳とは言え、精神年齢的に今さらお人形遊びはごめん被りたかったので助かった。代わりにお嬢様はチェスを嗜む。さすがにチェスの相手は無理なので、彼女が大人相手にチェスをしている間は何故か彼女のすぐ側に座らされて二人の対戦を見学している。
彼女曰く、私が側にいると安心して頭も冴えるそうだ。何の効果ですか?
お勉強も一緒にする。公爵令嬢としてお嬢様は実に色々なことを勉強しなければならない。これは将来王室に輿入れも想定しているのではないか。
確か七歳になったら貴族の子女はお城に招かれて王子や王女の側近候補や花嫁候補などを選ぶらしい。
来年にはお嬢様もお城に上がる。
そこでお嬢様は第二王子の婚約者候補になり、二人が十歳になる頃正式に婚約する。ここで候補から落ちればいいが、お嬢様の容姿ではまず目立つなという方が無理だろう。
婚約破棄の断罪イベントが十八歳。学園に入るのが十六歳だ。
時間があるようでない。
まずは一番最初のイベント。階段転落事件の阻止だ。ゲームではアシュリーの生い立ちはモノローグだけで終わっていた。
「コリンヌ、庭へ行きましょう」
「コリンヌ、お茶を飲みましょう」
何故かお嬢様は私をすごく気に入ってくれて、どこへ行くにも私を連れ回す。
周りに自分より年下の存在がいないから、お姉さん風を吹かしているのだろう。
公爵家のお嬢様、アシュリー様に気に入られたのはたまたまだ。
でもそのお陰でアシュリー様に付き従い、奥様が階段から落ちる事件を未然に防ぐことができる可能性も高くなる。
階段で奥様を見かけた時には常に距離を見計らい、何かあればすぐに助けられるように注意する。四歳児の力で何ができるかは疑問だが。
「コリンヌ?何を見ているの?」
その日も二階から降りていく奥様をはらはらしながら見詰めていた。
お腹が大きくなり足元が見えづらくなっているので、最近は誰かが付き従うようにしていたが、その時は誰もいなかった。
「奥様を」
「あ、お母様だ」
アシュリー様が母に気付き声をかけた。
「あら、アシュリー、コリンヌ、あなたちそこにいた、の」
一段ずつ確認しながら降りていた奥様が娘の声を聞いて階段の途中で視線を動かした。
「きゃっ!」
「危ない!」「コリンヌ!お母様!」
足を滑らせてぐらついた奥様に向かって走り込んで奥様を受け止めようとした。
しかし、四歳児の身体能力では大の大人を受け止めることなど物理的に不可能なわけで、間に合いこそすれ支えようとして腕力が追い付かず、私は階段と奥様の間のクッションになっただけだった。
「コリンヌ!」
うつぶせに階段に倒れ、奥様の体重に押し潰され階段に額をぶつけた衝撃で私は脳震盪を起こしてそのま気絶した。
お嬢様は少し変わっていて、おままごとなどはしない。私も四歳とは言え、精神年齢的に今さらお人形遊びはごめん被りたかったので助かった。代わりにお嬢様はチェスを嗜む。さすがにチェスの相手は無理なので、彼女が大人相手にチェスをしている間は何故か彼女のすぐ側に座らされて二人の対戦を見学している。
彼女曰く、私が側にいると安心して頭も冴えるそうだ。何の効果ですか?
お勉強も一緒にする。公爵令嬢としてお嬢様は実に色々なことを勉強しなければならない。これは将来王室に輿入れも想定しているのではないか。
確か七歳になったら貴族の子女はお城に招かれて王子や王女の側近候補や花嫁候補などを選ぶらしい。
来年にはお嬢様もお城に上がる。
そこでお嬢様は第二王子の婚約者候補になり、二人が十歳になる頃正式に婚約する。ここで候補から落ちればいいが、お嬢様の容姿ではまず目立つなという方が無理だろう。
婚約破棄の断罪イベントが十八歳。学園に入るのが十六歳だ。
時間があるようでない。
まずは一番最初のイベント。階段転落事件の阻止だ。ゲームではアシュリーの生い立ちはモノローグだけで終わっていた。
「コリンヌ、庭へ行きましょう」
「コリンヌ、お茶を飲みましょう」
何故かお嬢様は私をすごく気に入ってくれて、どこへ行くにも私を連れ回す。
周りに自分より年下の存在がいないから、お姉さん風を吹かしているのだろう。
公爵家のお嬢様、アシュリー様に気に入られたのはたまたまだ。
でもそのお陰でアシュリー様に付き従い、奥様が階段から落ちる事件を未然に防ぐことができる可能性も高くなる。
階段で奥様を見かけた時には常に距離を見計らい、何かあればすぐに助けられるように注意する。四歳児の力で何ができるかは疑問だが。
「コリンヌ?何を見ているの?」
その日も二階から降りていく奥様をはらはらしながら見詰めていた。
お腹が大きくなり足元が見えづらくなっているので、最近は誰かが付き従うようにしていたが、その時は誰もいなかった。
「奥様を」
「あ、お母様だ」
アシュリー様が母に気付き声をかけた。
「あら、アシュリー、コリンヌ、あなたちそこにいた、の」
一段ずつ確認しながら降りていた奥様が娘の声を聞いて階段の途中で視線を動かした。
「きゃっ!」
「危ない!」「コリンヌ!お母様!」
足を滑らせてぐらついた奥様に向かって走り込んで奥様を受け止めようとした。
しかし、四歳児の身体能力では大の大人を受け止めることなど物理的に不可能なわけで、間に合いこそすれ支えようとして腕力が追い付かず、私は階段と奥様の間のクッションになっただけだった。
「コリンヌ!」
うつぶせに階段に倒れ、奥様の体重に押し潰され階段に額をぶつけた衝撃で私は脳震盪を起こしてそのま気絶した。