月華の陰陽師2-白桜の花嫁-【完】

「ああ~ほんっと百合姫が見つけてくれてよかった~。霊力枯渇で倒れてたみたいだから気配終えなくて見つけられてなかったんだよ~。白、百合姫、迷惑をかけてすまなかった。感謝している。ありがとう」

涙雨を抱きしめた黒藤が、腰から上体を折って頭を下げてきた。

「感謝は百合姫に言ってくれればいいよ。それに最初に助けたのは華樹だから、会うことがあったら華樹にも」

「わたしにもこれ以上言わなくて大丈夫よ。華樹さんがすぐに見てくれたから無事だったんだと思うし」

「百合姫……本当に、ありがとう。華樹にも全力で礼を言う。つか探してくるわ」

「本当に心配してたんだな」

「当たり前だろ家族なんだから。じゃ! 縁も百合姫に礼をしたいって言ってたから、また日を改めて。華樹んとこ行ってくる!」

と、風の速さで駆けていった。

「相変わらず騒々しいわね……」

「うん……」

百合緋は呆れ気味だけど、白桜は思うところがあった。

家族……。黒藤は今、小路の所有する古民家で、滅多に姿を見せない一の式・無月、人の姿で黒の姉を称して家事を請け負う二の式・縁、そして三の式の涙雨と暮らしている。

母の紅緒はわけあって真紅と一緒に暮らしていて、さらに言うなら紅緒は十六年の間眠っていたので、黒藤には一緒に過ごしてきたごく近い家族はいない。

育ての親は小路流現当主の逆仁(さかひと)になる。

無月と縁、涙雨は黒の大事な家族だ。

……うん。黒にそう言える存在がいて、よかった。淋しくなくて、よかった。

(俺も黒も、背徳の陰陽師だから)


+++


「は、は、白桜様……!」

昼休み。

白桜が休み時間を一緒にいるのは大体、百合緋と真紅だ。

それに、真紅の従家の跡継ぎであり、真紅と同時期に転向してきた桜城架(さくらぎ かける)の四人でいることが多い。

架がいてくれることで男女比率が二対二になるので白桜は助かっている。

そんな一年生の教室に、顔を青ざめさせた華樹がよろよろとやってきた。え。

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