月華の陰陽師2-白桜の花嫁-【完】
2 御門の朝

――御門別邸。

首都にある御門別邸は、先代当主である祖父の白里(しろさと)が使っていた場所だ。

月御門本邸は京都にあるので、首都が都内にうつった現代では仕事がしにくいから、と。

月御門白桜が当主を継いだのは十三の頃。現在十六歳、高校一年になったが、幼い頃から祖父について回っていたので、実を言うと京都で過ごした時間は少ない。

白桜に当主を譲った白里は京都の本邸に戻り、白桜は別邸も継いだ。

現在別邸には、月御門の人間が三人と、白桜の幼馴染の水旧百合緋(みなもと ゆりひ)という少女がいる。

月御門――通称『御門』の三人は、白桜の元で修行中の陰陽師というわけだ。

司家直属、御門が当主。

白里の次に当主になるはずだった白桜の母、白桃(はくとう)は若くして儚くなり、白桜は父の存在は知らない。

仕事上、先代の祖父を頼ることはできるが、あまりみっともない姿をさらすことはできない。

自分で自分を支え、自律していかなければならない。



「白桜様、よろしいでしょうか」

御門別邸の最奥にある終(つい)の堂で座していた白桜に、扉の外から声がかかった。

「うん。百合姫の準備はできた?」

立ち上がりながら振り返ると、白桜の式である天音(あまね)が困惑した顔で白桜を見ていた。

天音は天女と称される容貌で、背は高く重ね着た着物に、足元まで流れる銀髪は百合緋によっていつも綺麗に結われている。

「それは……その、大丈夫なのですが……取り急ぎ華樹(かき)殿のもとへ」

「? ああ。わかった」

華樹は別邸にいる御門の人間の一人で、白桜と同じ星陵学園の生徒――年齢は一つ上なので現在二年に籍をおいている。

今の別邸に常駐する人間の中では最年長なので、家の中の取り仕切りを任せている者だ。

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