【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「シスター・クラーラの作ったクッキーよ。はい、あなたの分」

「いらない」

 一言で拒絶し、シリィはふいっと顔を背ける。

「どうして? クッキーきらい?」

「ガキじゃないんだ。甘いものなんていらない」

「そう……」

 とげとげしい言葉で突き放す彼に、私は――。

「すごいわ!あなたって、大人なのね!かっこいい!!」
 
 とっても感動した。

「は?」

 シリィが眉をひそめる。そんな不機嫌な顔も、当時の私には大人っぽく映った。

(年は私より2、3歳くらい上かしら。群れずにひとりでいるのも、一匹狼みたいでかっこいいわ!)

「他の子にあげるために、クッキーを我慢できるなんて、あなたってオトナなのね! すごくかっこいいわ! よしっ! 私の分も他の子にあげてこよーっと」

「まて!…………なんだ、あいつ」

 意気揚々と他の子へクッキーをあげに行く私には、彼の呆れ混じりの声は聞こえなかった。

 その日から、シリィは私のなかで『気難しそうな子』から『ちょっと年上の大人っぽい子』にランクアップ。尊敬の対象になった。

(私もシリィみたいに、他の子のために我慢できるオトナになりたい!)

 背伸びしたいお年頃の私は、シリィを『師匠』と勝手に位置づけ、そのオトナっぽい雰囲気を真似すべく、しきりに後を追いかけた。
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