【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 そして週が何度もめぐり、季節は冬から春へと移り変わる。
 
 うららかな春の陽気を感じる、とある昼下がり。
 今まで私に無関心だったシリィが、ついにぶちぎれた――。

 
 その日は天気が良くて、お昼はみんなで中庭に出て遊んでいた。
 
 私は他の子と数回追いかけっこをしたあと、最近の定位置――木陰に座るシリィの横に、腰を下ろす。

 今日は何のご本を読んでいるの?と聞こうとして、彼の銀髪に緑の葉がついているのに気付いた。

 ツンと澄ましたオトナな男の子が、頭のてっぺんにちょこんと葉っぱを乗せている。
 何だかとっても可愛らしい。
 
 私は両手で口元を隠してくすくすっと笑うと、そうっと手を伸ばした。
 
 その瞬間、彼がこちらを見やり――。

「さわんな!!」

 大声とともに、手がパシンッと叩き落とされる。
 
 痛みはなかったが、本気で拒絶されたことによるショックが大きかった。

 ……嫌われた。
 
 そう思った途端、胸が痛くなった。目に涙がにじむ。

 シリィは一瞬はっとした表情を浮かべたものの、次の瞬間には、苦しげに顔を歪めて低くうなった。
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