【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 私は駆け出し、華奢な少年めがけてダイブした――!

「はあぁ!? ちょっ、うわぁっ」

 渾身の捨て身ハグを真っ正面から受けたシリィは、私を抱き留めたまま、すってんころりん後ろに倒れる。

 ふわふわな芝生に折り重なって転がると、瑞々しい草の香りがした。

 彼の上に乗っかった体勢で目を開けると、ちょうど至近距離で目が合う。

 いつもはクールな無表情のシリィが、ぽかんと口を開けて呆けている。
 無防備な姿にちょっとだけ、胸の内がすっきりした。

「お、おまえ、なにして……。怪我したらどうするんだ、このおてんば!」

 うろたえながら怒るシリィ。私は上体を起こして馬乗りになると、もっと大きな声で叫んだ。
 
「だって、ぜったいシリィが受け止めてくれるって信じてたもん!」

「なっ……」

「私、シリィが本当は優しいって知ってるよ。転びそうになったとき、助けてくれたよね? 本の結末言わないでってお願いしたら、黙っていてくれた。あと最近は、私に合せてゆっくり歩いてくれてるでしょ?全部、気付いてるよ」
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