【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
我に返った伯爵令嬢が、小馬鹿にしたように、ふんっと鼻をならした。
「いやだわ。カップを落とすなんて、淑女として恥ずかしくないのかしら。まだ病気が治っていないのではなくて?」
「おやめなさい。シレーネさまに失礼ですわよ」
伯爵令嬢の無礼をたしなめるミーティアに、その場にいた令嬢たちが「お優しい」だの「まさに聖女さまだわ」なんて賞賛を送る。
(類は友を呼ぶというけれど。ミーティアも、よくもまぁこれだけ人柄の『よろしい』お友達を集められるものね)
張り合うのも馬鹿馬鹿しい。けれど、言われっぱなしで嫌がらせがエスカレートしても面倒。
(すこし釘をさしておかなきゃね。安易にこちらに手を出すと、どうなるのか)
私は凜と通る声で、部屋に充満する陰口のひそひそ声を切り裂いた。
「お気遣い、ありがとうございます。おかげ様で病気はすっかり良くなりました。――それにしてもこの紅茶、とても良い香りですわね」
こぼしてしまったのが残念ですわと暢気に言う私を、その場にいた全員がいぶかしげに見ている。
「紅茶と言えば……そうだわ」
私は視線を、ミーティアの隣に座る伯爵令嬢へと向けた。
「いやだわ。カップを落とすなんて、淑女として恥ずかしくないのかしら。まだ病気が治っていないのではなくて?」
「おやめなさい。シレーネさまに失礼ですわよ」
伯爵令嬢の無礼をたしなめるミーティアに、その場にいた令嬢たちが「お優しい」だの「まさに聖女さまだわ」なんて賞賛を送る。
(類は友を呼ぶというけれど。ミーティアも、よくもまぁこれだけ人柄の『よろしい』お友達を集められるものね)
張り合うのも馬鹿馬鹿しい。けれど、言われっぱなしで嫌がらせがエスカレートしても面倒。
(すこし釘をさしておかなきゃね。安易にこちらに手を出すと、どうなるのか)
私は凜と通る声で、部屋に充満する陰口のひそひそ声を切り裂いた。
「お気遣い、ありがとうございます。おかげ様で病気はすっかり良くなりました。――それにしてもこの紅茶、とても良い香りですわね」
こぼしてしまったのが残念ですわと暢気に言う私を、その場にいた全員がいぶかしげに見ている。
「紅茶と言えば……そうだわ」
私は視線を、ミーティアの隣に座る伯爵令嬢へと向けた。