【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
愛しい女性(シリウス)
はぁ、とため息をつく。
今日はこれで一体、何度目だろうか。
見かねた副官のライアンが、書類から顔を上げて「どうしたんです殿下?」と尋ねてきた。
「ここ数日、様子が変ですよ? 憂い顔でため息をつくなんて、恋煩いする乙女じゃないんですから」
はからずしも図星を突かれ、返答に困る。
無言の俺に、ライアンが「え、本当に恋煩いなんですか」と絶句した。手元の書類を放り出して、ニヤニヤ顔で俺の机に歩み寄ってくる。
「勤務中だ。無駄口を叩かず職務に戻れ」
「朝からずっと詰め所で書類仕事なんて、健康に悪いですよ。ちょっとだけ休憩しましょう。オレが悩みを聞いてあげますから」
「結構だ」
「そんなこと言わずに。ほら、ここには俺しか居ませんし。他言はしませんから」
ライアンは、俺のデスクの正面に椅子を持ってくると「さぁさぁ」と話を促してくる。
こうなったコイツは手に負えない。従者であり護衛であり、二歳年上の悪友でもあるライアンは、軟派な見た目どおり、恋愛話の類いが好きな奴なのだ。
話題を提供してしまったら最後、話すまでつきまとわれる。
俺は観念して、口を開いた。
今日はこれで一体、何度目だろうか。
見かねた副官のライアンが、書類から顔を上げて「どうしたんです殿下?」と尋ねてきた。
「ここ数日、様子が変ですよ? 憂い顔でため息をつくなんて、恋煩いする乙女じゃないんですから」
はからずしも図星を突かれ、返答に困る。
無言の俺に、ライアンが「え、本当に恋煩いなんですか」と絶句した。手元の書類を放り出して、ニヤニヤ顔で俺の机に歩み寄ってくる。
「勤務中だ。無駄口を叩かず職務に戻れ」
「朝からずっと詰め所で書類仕事なんて、健康に悪いですよ。ちょっとだけ休憩しましょう。オレが悩みを聞いてあげますから」
「結構だ」
「そんなこと言わずに。ほら、ここには俺しか居ませんし。他言はしませんから」
ライアンは、俺のデスクの正面に椅子を持ってくると「さぁさぁ」と話を促してくる。
こうなったコイツは手に負えない。従者であり護衛であり、二歳年上の悪友でもあるライアンは、軟派な見た目どおり、恋愛話の類いが好きな奴なのだ。
話題を提供してしまったら最後、話すまでつきまとわれる。
俺は観念して、口を開いた。