【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「……お叱りは、あとで受けます」

 次の瞬間――パシンッと、私の左頬に衝撃が走る。痛みはなかった。ただ急な出来事に驚いて顔をあげる。
 
「お嬢様、しっかりして下さい! あなたが何に悩み絶望しているのか、私には分かりません。ですが――ここで諦めてしまって良いのですか!」

 力強いソニアの言葉に、私は目が覚めたように我に返った。
 
「いいえ……諦めない。私は絶対に、諦めないわ!」

 私は立ち上がると、急ぎ手紙をしたためた。

「ソニア、これを急いでシリウス殿下へ届けて頂戴!」

「もちろんです、お嬢様」
 
 手紙を受け取ったソニアは、ほっとした笑みを浮かべたあと、すぐさま表情を引き締め部屋を出て行った。

(シリウス殿下、どうか――ご無事で)
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