【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「ソニア、帰りましょうか」
「もうお帰りになるんですか? 殿下に一言挨拶をしていかれた方が良いのでは」
「いいえ。殿下は次の王になるかもしれない尊い御方。私のような者が話しかけちゃいけないわ」
そう、私のような、ワケありの人間が関わって良い人じゃない。
シリィと孤児院で過ごしたエスターは、もうこの世にいない。今の私はアデル・シレーネ。ただの商家の娘で、爵位のない平民。
色んなことを諦めないと心に誓ったけれど、さすがに雲の上のお人に手を伸ばすほど、私は無謀じゃない。
処刑イベントは起こらず、未来はシナリオから外れて大きく変わった。
これ以上、私があの人にしてあげられることは、もうない。
「さぁ、ソニア。行きましょう」
私は涙を拭いて、笑顔で立ち上がった。あえてシリウスの方を見ないようにして、足早にその場をあとにする。
また会えて嬉しかったわ、シリィ。
あなたの夢をいつまでも応援しています、シリウス殿下。
エスターとしてシリィと出会い、恋をして。
アデルとして再び出会い、もう一度、恋をした。
今も昔も、あなたのことが――。
「大好きだったわ」
私の小さな告白は、その場の喧噪に紛れ、跡形もなく消え去った。
「もうお帰りになるんですか? 殿下に一言挨拶をしていかれた方が良いのでは」
「いいえ。殿下は次の王になるかもしれない尊い御方。私のような者が話しかけちゃいけないわ」
そう、私のような、ワケありの人間が関わって良い人じゃない。
シリィと孤児院で過ごしたエスターは、もうこの世にいない。今の私はアデル・シレーネ。ただの商家の娘で、爵位のない平民。
色んなことを諦めないと心に誓ったけれど、さすがに雲の上のお人に手を伸ばすほど、私は無謀じゃない。
処刑イベントは起こらず、未来はシナリオから外れて大きく変わった。
これ以上、私があの人にしてあげられることは、もうない。
「さぁ、ソニア。行きましょう」
私は涙を拭いて、笑顔で立ち上がった。あえてシリウスの方を見ないようにして、足早にその場をあとにする。
また会えて嬉しかったわ、シリィ。
あなたの夢をいつまでも応援しています、シリウス殿下。
エスターとしてシリィと出会い、恋をして。
アデルとして再び出会い、もう一度、恋をした。
今も昔も、あなたのことが――。
「大好きだったわ」
私の小さな告白は、その場の喧噪に紛れ、跡形もなく消え去った。