【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
廷臣が去ったのを確認して、私は口を開いた。
「シリウス殿下、申し上げてもよろしいでしょうか」
「ああ。構わない」
「殿下は今まさに、王位継承と王妃選定の真っ最中。正直私は……巻き込まれたくないのです」
傷ついたシリウスの顔を見るのが苦しい。私は視線を外して、一息で言い切った。
「私は商家の娘として、ふつうの平民らしく穏やかな人生を送りたいと思っております。殿下と二人っきりでお話しするなど、私にはとても恐れ多く、怖いことなのです。どうか、ご理解下さい」
泣かず、言葉に詰まらず、最後まで言い切れた自分を褒めてあげたい。
沈黙が落ちる。
その間ずっと私はうつむいていた。
シリウスがどんな顔をしているのか分からない。……が、きっとこれで、私への興味を失っただろう。
やがてシリウスが「わかった」と呟いた。掠れた悲しげな声だった。
それを合図に私はすぐさま頭を下げて、逃げるようにその場を立ち去った。
「シリウス殿下、申し上げてもよろしいでしょうか」
「ああ。構わない」
「殿下は今まさに、王位継承と王妃選定の真っ最中。正直私は……巻き込まれたくないのです」
傷ついたシリウスの顔を見るのが苦しい。私は視線を外して、一息で言い切った。
「私は商家の娘として、ふつうの平民らしく穏やかな人生を送りたいと思っております。殿下と二人っきりでお話しするなど、私にはとても恐れ多く、怖いことなのです。どうか、ご理解下さい」
泣かず、言葉に詰まらず、最後まで言い切れた自分を褒めてあげたい。
沈黙が落ちる。
その間ずっと私はうつむいていた。
シリウスがどんな顔をしているのか分からない。……が、きっとこれで、私への興味を失っただろう。
やがてシリウスが「わかった」と呟いた。掠れた悲しげな声だった。
それを合図に私はすぐさま頭を下げて、逃げるようにその場を立ち去った。