【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
聖女のほほ笑みを顔に貼り付け、愛嬌たっぷりに走り寄る。
振り返ったシリウスは、あいかわらずの無表情だった。
(マジ陰気な男。愛想笑いもできないのかよ。顔はメイナードより好みなのに、性格最悪だわ)
心の中で悪態を吐きつつも、あたしは冷静だった。
落ち目のメイナードにすがるより、勝ち馬に乗るべき。
あたしは狙いをシリウスに定めた。
「シリウス殿下、どちらへ行かれるのです?……きゃあっ!」
途中でわざとつまずき、可愛らしい悲鳴を上げながらシリウスに抱きつく。
上目遣いで頼りなさをアピールし、さりげなく胸を押しつけて誘惑。庇護欲と性欲をかき立て『こいつは俺が守ってやらなきゃだめだ』と思わせたら既に落ちたも同然。
男なんて、ほんと笑っちゃうくらい馬鹿で単純な生き物。
――のはずだった。
「ぎゃあっ!」
蛙の潰れたような音が口からもれる。気付けば、あたしは誰もいない場所へ顔面からダイブしていた。
鼻と額を打ち付け、ひりひり痛む。
え? なに、どういうこと? と、頭が真っ白になった。
「悪いな、とっさに避けてしまった」
みっともなく地面に座り込むあたしを、シリウスが興味なさげに見下ろす。
(クールイケメン? 違うわ。こいつは冷血漢よ。こんな可愛いあたしにまるで興味ないなんて、どうかしてるわ)
振り返ったシリウスは、あいかわらずの無表情だった。
(マジ陰気な男。愛想笑いもできないのかよ。顔はメイナードより好みなのに、性格最悪だわ)
心の中で悪態を吐きつつも、あたしは冷静だった。
落ち目のメイナードにすがるより、勝ち馬に乗るべき。
あたしは狙いをシリウスに定めた。
「シリウス殿下、どちらへ行かれるのです?……きゃあっ!」
途中でわざとつまずき、可愛らしい悲鳴を上げながらシリウスに抱きつく。
上目遣いで頼りなさをアピールし、さりげなく胸を押しつけて誘惑。庇護欲と性欲をかき立て『こいつは俺が守ってやらなきゃだめだ』と思わせたら既に落ちたも同然。
男なんて、ほんと笑っちゃうくらい馬鹿で単純な生き物。
――のはずだった。
「ぎゃあっ!」
蛙の潰れたような音が口からもれる。気付けば、あたしは誰もいない場所へ顔面からダイブしていた。
鼻と額を打ち付け、ひりひり痛む。
え? なに、どういうこと? と、頭が真っ白になった。
「悪いな、とっさに避けてしまった」
みっともなく地面に座り込むあたしを、シリウスが興味なさげに見下ろす。
(クールイケメン? 違うわ。こいつは冷血漢よ。こんな可愛いあたしにまるで興味ないなんて、どうかしてるわ)