【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 血が滴る腹部をおさえ、絶叫するミーティア。
 呆然とする私。

 
 ……意味が、分からない。

 
 ミーティアが床に倒れ込んだ直後、自室の扉が勢いよく開いた。
 
 血相を変えてやってきたのは両親だった。
 
「叫び声が聞こえたが……ミーティア、大丈夫か! 一体、何があったんだ」

 両親が血を流し倒れるミーティアに駆け寄る。

「おい、医者を呼べ! 早く!」

 場は一瞬にして騒然となった。
 
 傷口を確かめ医者を手配する両親を、私は呆然と見守ることしか出来ない。


 本当に、意味が分からない。
 
 頭の中は真っ白。何も考えられない。

 
 ふいに父が顔を上げ、私を睨んだ。


「妹を殺そうとするとは……」

「ちがう……違うわ! 私は何もしてない!」

「何もしてないだと? じゃあ、その手に持っている物は何だ!」

「……え?」


 ゆっくり右手に視線を落とす。
 
 そこにあったのは、血に濡れて真っ赤に染まったペーパーナイフ。紛れもない、凶器。


「――っ!」


 引きつった悲鳴を上げて、私は右手を振り払った。カランという耳障りな音とともに、ナイフが床に転げ落ちる。

 あまりの恐ろしさに、体が勝手に震えた。
 
 
(もしかして、犯人だと疑われているの……?)
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