【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 ミーティアが椅子を蹴飛ばし立ち上がる。が、ダニエルは構わず話し続けた。
 
 
「ご報告すべき事柄は、まだあります。――聖女ミーティアの癒しの異能は、偽物です」


 広間に集った人々が「うそだろ……」と驚愕の声を上げる。
 
「ミーティアの異能は『盗み』の力。癒しの力はミーティアの姉、エスター・ロザノワールが持っていたものでした」

「もしかして……ミーティアは姉の力を盗んだ、というのか……?」

 絶句し固まっていたメイナードが、かすれた声で尋ねる。
 
 自分の『聖女』が、姉から力を奪うような非情な人間だと信じたくないのだろう。嘘だと言ってくれといわんばかりのメイナードに対し、ダニエルは無情にも「はい」と頷いた。

「エスターの17歳の誕生日、ミーティアは姉から癒しの異能を盗みました。当時、私は現場に居合わせたため、盗みの瞬間を目撃しております。程なくして、エスターは殺人未遂を犯したとして追放され、療養所で亡くなりました」

「まさか。あの事件も、君が仕組んだことなのか……?」
 
 信じられない……といった顔で、メイナードがミーティアに問いかける。

 ミーティアは答えない。虚ろな目で一点を見つめ、ぶつぶつ小声で何かを言っている。もはや正気の顔ではなかった。
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