【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
あたしの世界(ミーティア)
エスターが追放されてからひと月あまり。あたしの人生は順調そのものだった。
姉が妹を刺したというショッキングな事件は、新聞を介してまたたく間に王国全土へ広まった。
それに伴い『ミーティア伯爵令嬢は、死の淵から生還するほど強力な癒しの力を持っている』という噂が広まり、それはメイナード王子の耳にも入ったらしい。
近々メイナードを治すため、王宮にあがることが決まっている。
(そこであたしは、王子に見そめられ溺愛される……ふふっ、ようやく世界があたしに追いついてきたようね)
鏡の前で今日の夜会に着ていくドレスを選んでいた時、ドアがノックされた。返事をすると、父が部屋に入ってきて淡々と告げた。
「エスターが亡くなったようだ」
その言葉を聞いた瞬間、あたしはとっさに口元を両手で覆い、顔をそむけた。
座り込み肩を震わせ、掠れた声で「あぁ……お姉様……」と嘆き悲しむ。
――――フリをする。
父は気遣わしげな顔で言葉を探していたが、あたしが「今は一人にしてほしいの。お願い」と言うと部屋を出て行った。
足音が遠ざかるのを聞き届けたあと、あたしは口から手を離した。これ以上、我慢ができなかった。
「くく……くっ、ふふっ、あははっ!」
笑いが止まらない。
おかしくておかしくて、たまらない――!
「主人公より目立とうとするから、こんな目に遭うのよ」
姉が妹を刺したというショッキングな事件は、新聞を介してまたたく間に王国全土へ広まった。
それに伴い『ミーティア伯爵令嬢は、死の淵から生還するほど強力な癒しの力を持っている』という噂が広まり、それはメイナード王子の耳にも入ったらしい。
近々メイナードを治すため、王宮にあがることが決まっている。
(そこであたしは、王子に見そめられ溺愛される……ふふっ、ようやく世界があたしに追いついてきたようね)
鏡の前で今日の夜会に着ていくドレスを選んでいた時、ドアがノックされた。返事をすると、父が部屋に入ってきて淡々と告げた。
「エスターが亡くなったようだ」
その言葉を聞いた瞬間、あたしはとっさに口元を両手で覆い、顔をそむけた。
座り込み肩を震わせ、掠れた声で「あぁ……お姉様……」と嘆き悲しむ。
――――フリをする。
父は気遣わしげな顔で言葉を探していたが、あたしが「今は一人にしてほしいの。お願い」と言うと部屋を出て行った。
足音が遠ざかるのを聞き届けたあと、あたしは口から手を離した。これ以上、我慢ができなかった。
「くく……くっ、ふふっ、あははっ!」
笑いが止まらない。
おかしくておかしくて、たまらない――!
「主人公より目立とうとするから、こんな目に遭うのよ」