【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 社長の親族ということで、入社後もちやほやされた。面倒事は他の人がやってくれたから、あたしの仕事は簡単な書類整理くらい。

 最初は「ラッキー」と思っていたけど、だんだんつまんなくなって……。

「雑用なんかじゃヤダ! 同期にマウントとれる凄い仕事がしたい」と叔父に駄々をこねれば、翌週には大きな案件を任せてもらえた。
 
 最初はやる気だったけど、内容聞いたら面倒くさそうで、余計なこと言うんじゃなかったって後悔……。
 
 前任の担当者は、引き継ぎを終えると定時で帰っていった。
 
(「手伝うよ」とか「頑張ってね」の一言もないの? あの先輩、性格わるすぎ。まぁ案件取られたんだから当然かぁ。ていうか、この資料何百ページあるわけ? ああ、面倒くさい。マジ腹立つ)

 心の中で文句を言いながら読み進めるうちに、なんだか馬鹿らしくなってきた。

(あー、残業なんてやってらんない)

 あたしは仕事を放り出して送迎の車に乗り込んだ。
< 49 / 226 >

この作品をシェア

pagetop