【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「ところで、君は――?」
聞きたいことは山ほどあるけれど、私は『エスターの親友アデル』として名乗り、ここに来た理由を述べる。
「私、アデル・シレーネと申します。エスターとは親友でした。私は共和国で療養していたので、まだお墓参りが出来ておらず……今日はエスターの誕生日のため、花をたむけに参りました」
「そうか。……彼女がシレーネ商会に通っていたのは、やはり友人に会うためか」
後半は、あまりに小さな呟きだったため聞こえなかった。
首をかしげる私に、シリウスは「何でもない」と首を振った。そして再び、私の墓標に目を落とす。
憂いを帯びた横顔は儚げで、悲しそうで……私は目が離せなくなった。
さぁっと風が吹き、墓石を飾る花がかすかに揺れる。
シリウスが持って来たのは、愛らしいネモフィラの花束だった。
ふわふわと風に揺れる淡い水色の花びら。
悲しげに目を伏せるシリウス殿下の横顔。
ぼんやりそれらを眺めていたとき、頭の中におぼろげな光景が蘇った。
――『私たち、ずっと友達よ! === 』
私が、誰かの名前を呼ぶ。
差し出される花。懐かしい子どもの声。
にっこり笑う、===の顔。
突然フラッシュバックした記憶の断片に、私は戸惑う。
今のなに……? と思った瞬間、脳内の光景が、テレビの電源が切れるようにプツリと途絶えた。
「シレーネ令嬢? 顔色が悪いが、大丈夫か」
気付けばシリウスが私の顔を気遣わしげに覗き込んでいた。
聞きたいことは山ほどあるけれど、私は『エスターの親友アデル』として名乗り、ここに来た理由を述べる。
「私、アデル・シレーネと申します。エスターとは親友でした。私は共和国で療養していたので、まだお墓参りが出来ておらず……今日はエスターの誕生日のため、花をたむけに参りました」
「そうか。……彼女がシレーネ商会に通っていたのは、やはり友人に会うためか」
後半は、あまりに小さな呟きだったため聞こえなかった。
首をかしげる私に、シリウスは「何でもない」と首を振った。そして再び、私の墓標に目を落とす。
憂いを帯びた横顔は儚げで、悲しそうで……私は目が離せなくなった。
さぁっと風が吹き、墓石を飾る花がかすかに揺れる。
シリウスが持って来たのは、愛らしいネモフィラの花束だった。
ふわふわと風に揺れる淡い水色の花びら。
悲しげに目を伏せるシリウス殿下の横顔。
ぼんやりそれらを眺めていたとき、頭の中におぼろげな光景が蘇った。
――『私たち、ずっと友達よ! === 』
私が、誰かの名前を呼ぶ。
差し出される花。懐かしい子どもの声。
にっこり笑う、===の顔。
突然フラッシュバックした記憶の断片に、私は戸惑う。
今のなに……? と思った瞬間、脳内の光景が、テレビの電源が切れるようにプツリと途絶えた。
「シレーネ令嬢? 顔色が悪いが、大丈夫か」
気付けばシリウスが私の顔を気遣わしげに覗き込んでいた。