【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
 彼の青い瞳に見つめられ、鼓動が高鳴る。

 なぜか無性に、なつかしいと思った。

「恐れながら、殿下にお尋ねしたいことがございます」
 
 本来なら、平民が気安く王子殿下に話しかけるなど、あってはならないこと。しかし、気付けば私は会話を切り出していた。
 

「シリウス殿下は、エスターとはどのようなご関係だったのですか? 友人というには、身分が違いすぎるかと」

「彼女を教会孤児院で、何度か見かけたことがある。すれ違ったこともあるが、俺はいつも顔を隠していたから、向こうは気付いていなかっただろう」

 そういえば、私が追放される少し前、教会の入り口で転びそうになったのを助けてもらった。

 あの男性は、お忍び中のシリウスだったのかもしれない。

 顔を上げると、こちらを見つめる彼と目が合った。

 吸い込まれそうなほど透明な青い瞳に、私は、その場に縫い止められたかのように動けなくなった。
 

 シリウスが、真剣な顔で話を切り出す。


「これ以降の言葉は、エスターの親友である君にしか言えないことだ。決して他言せず、胸の内にしまっておいてくれるか」

「……はい」


 何を、言われるのだろう……。
 
 小説のシリウスは、自分を馬鹿にする者、逆らう者には決して容赦しないキャラで、悪役王子の役割にふさわしい冷酷な人物だった。

 
 シリウスの表情が一層険しくなり――。


「俺は、エスターの死に疑問を抱いている」


 やけに確信めいた口ぶりで言った。
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