【コミカライズ配信中】アデル~顔も名前も捨てた。すべては、私を破滅させた妹聖女を追い詰め、幸せをつかむため~
「エスター、誕生日おめでとう」

 婚約者のダニエルが懐から小箱を取り出し、開けた。
 中にあったのは、ダイヤとエメラルドが煌めく綺麗なネックレス。

 
「ありがとう、ダニエル」

 
 お礼を言うと、ダニエルが後ろに回ってネックレスをつけてくれる。
 
 パーティの出席者が一斉に拍手と歓声を上げ、場はお祝いムード一色に染まった。

「ロザノワール伯爵令嬢とカルミア侯爵子息は、美男美女で実にお似合いですなぁ」

「いやぁ、めでたい! 実にめでたい!」

 声をかけてくる招待客に笑顔で対応していると、ふいに嫌な視線を感じて、私は周囲を見渡した。

 柱の陰から、赤毛の少女が私のことを恨めしげに睨み付けている。
 
 妹のミーティアだ。

(また、なのね)

 私はミーティアから視線を外し、ため息をついた。

 
 一歳年下の妹はひどく我が儘な性格で、他人のもの、特に私のものを何でも欲しがる。
 
 きっと今日も『そのネックレス頂戴!』と駄々をこねるに違いない。

 面倒事の予感に、私はもう一度ため息をついた。
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