抗えない運命
伊月side
18×3/3/×× 晴れ
「ここは、実験施設なのかもしれない。」
僕はそう誠哉くんに問いかけた。
これまでのみんなの様子
施設の職員の不審な動き。
これら全てから紐解いた答えを
語り始めるが誠哉くんは
驚きもせずただ相槌を打つだけだった。
「驚かないんだね?もしかして知ってたの?」
つい咎めるような視線を
ぶつけてしまった。
それでも誠哉くんは少しだけ瞳を揺らして
いつもの雰囲気に空気を変えた。
「ううん…
ただ伊月と同じで違和感を
突き詰めていったら
同じ仮説にたどり着いただけだよ。」
「この前の健康診断…
あの時誠哉くんも
歯を抜いていたの?」
誠哉くんは頷いて口を見せた。
ちょうど犬歯にあたる部分だけが
ゴッソリと抜け落ちていた。
誠哉くんが腕を伸ばす。
こちらに伸ばされた右手には
白く長い、鋭い牙が
握りしめられていた。