香道部の佐山くんに初めての恋をしました。
「下の方に名前を書いてください……星野さんは“かな”と書いてくださいね」
「はい」
私は筆を持ち、名前を書く。
前よりは上手くなったと思う……けど、隣にいる佐山くんを見るととても綺麗な文字が並んでいる。
佐山くんの名前、煌太の煌ってとても難しそうなのに。まるで書道の先生のように美しい。
「では、全部開いて右から三列目に漢数字で一から七と書きましょう。少しだけ左側に書いてください」
國宗先生の言うとおりに書いていって紙を閉じた。それを硯の左肩に置く……これも先生の説明通りだ。
「今日は“船”と“雲”の香りを聞いていただきます。ではまず、船の試香をしていきます。では聞いていきましょう……では、試香を焚き始めます」