クールな黒淵くんは甘い。
「や、やばい……まじで寒い。」
「ほんとやっちゃったね……柚衣…。」
校庭はビュンと冷たい風が吹き,砂がまった。
今は10月上旬。もうすっかり夏の暑さなんて忘れて、肌寒くなってきたところなのに…。
「長袖わすれるなんてほんとに私はバカ。」
「ほんと柚衣はバカ…。」
「あーもーやめてよ…。これだから黒淵くんにも…。」
「はいはい。そっちも忘れようね。」
よりによって今日の体育が外でのサッカーだなんて…。今から雨でも降らないかな。
はぁとため息をついて、しぶしぶ決められた自分のチームに行ったのだが、そこで問題が起こった。
「やばい!黒淵くんと同じチームだ!!」
「黒淵いたら勝ち確定じゃん。」
「黒淵くんよろしくね!」
そんな言葉をスールするクールな黒淵くん。
…よりによって黒淵くんと同じチームになってしまった。
朝、彼ははいつもと変わらない様子で教室に入ってきた。もちろん、いつもどおり目は合わなかったが。
「あれ、秋華さんジャージ忘れちゃったの?相変わらずのドジだね…。」
「大丈夫?寒くない?俺のかそっか?」
黒淵くんに話しかけていた数人が半袖でいる私に気づき、声をかけてきてくれる。
いや大丈夫と言おうと思ったが、さすが任侠学院の生徒。人の道を極めてるだけある。自分のジャージを脱いで渡してくれた。
「ありがとう」
そう言って受け取ろうとした私の手を上から誰かの手が掴む。