クールな黒淵くんは甘い。


唖然とする周りとともに、私は上がりそうな自分の口角を抑えるのに必死だった。

くちびるがプルプルする……!


「ほらね。いったでしょ、柚衣。」


「うん……。」


一部始終を見ていたのであろう、アキちゃんがわざわざ来てくれて、なぜか自慢げに言ってくる。

ついにはにやけてしまった私に彼女もまたニヤニヤしていた。
    


「うわ、大きい……!」


いざ彼のジャージに袖を通してみると…、せが180センチある黒淵くんです。すごくぶかぶかで、ファスナーをしめると丈の短いワンピースみたいになってしまった。あと何より、


黒淵くんの匂いがする…!


同じ柔軟剤を使っているはずなのに、黒淵くんはいつも安心する匂い…グリーン系の香りがする…。香水を付けてるのかな?




「あわわわわ……!」



「お、いーじゃん柚衣!彼ジャージ!」
 


「つ、つつき合ってないしっ!彼ジャージではない!」

 

黒っぽいうちのの学園のジャージの生地に縫われている、『黒淵』の文字。

上から見るとなんだか、自分が黒淵になったみたいで…て何考えてるの私は!


唖然としていた周りの女の子からキャーと黄色い声が上がる。

私は恥ずかしいのと嬉しいのでごちゃごちゃになって赤い頬と、にやけそうになる口元を隠すために、少し大きいハーフジップに顔を埋めた。

よかった…。嫌われてはなかったってことだなよね?
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