クールな黒淵くんは甘い。



「ほらー。席につけ。」



「やば。もう時間じゃん。早く片付けないと。」


「うん!」


もう朝会ギリギリの時間になっていたようだ。皆んなあたふたしながら制作途中の紙や物をロッカーの中にしまう。

ごほんと体格の良い、矢田先生は咳払いをして、こう告げた。


「今日はなんとこのクラスに転校生が来る。……入ってこい。」


クラスがざわめく。急に転校生なんて…、なんでいきなり?

ガラリと静かに扉を開けて、転校生…とその後から黒淵くんが入ってくる。そういえば今日黒淵くん見ないと思った…。



「きょ、今日から転校してきました。白姫 春華です。よろしくお願いします。」



緊張しているのか少し声が震えている彼女は深々とお辞儀をした。

白姫 春華…そんな可愛いらしい名前から考えられないほど、彼女は…悪く言えば地味だ。

赤い着物は艶があって綺麗だが、二つの三つ編みに、厚い伊達メガネ。化粧も決して派手ではなく、薄い。

物語に出てくる、いわゆる『地味子』みたいな子だ。



< 18 / 53 >

この作品をシェア

pagetop