クールな黒淵くんは甘い。
信じらなくて、信じたくなくて。
でも寮部屋から黒淵くんの物がなくなって、授業の時も、移動教室の時も、ずっと春華さんの傍に彼が居て。私は今でも目を背けている。
あいにく、黒淵くんが出て行っても私は何の事件にも巻き込まれることはなくて平和だった。
「いっそのこと誰か誘拐してくれれば良いのに。」
「なーに言ってんの、秋華ちゃん。」
図書室の机の上に脚をのせ、思わず漏れてしまった言葉に対して金髪を揺らしてニコリと笑う彼、人櫻 峡為(じんおう かいい)。
「ごめん…ひとりごと。」
黒淵くんと距離が離れても時間は進み、11月となった今、学園祭は目前だった。
彼人櫻 峡為と出会ったのは三ヶ月前。
私達のクラスは射的屋さんとクレープ屋さんをするのだが、私はクレープ屋さんの内装担当を任された。
あまり黒淵くんと春華ちゃんがいる教室に居たくなかった私は図書室で設計をすることにした。
そこで寝ていたのが、峡為くんだった。
金髪に着崩した紺色の着物。耳には沢山のピアス。
図書室の机で寝ているのを見た時は絶対族に入っている人だと思った。
絶対関わっちゃいけない人だ…。また巻き込まれる……そう思っていたのだけれど、
『おーい。お前。黒淵の彼女なのー?』
『は!?ち、違うよ!!』
突然起きた彼にそう尋ねらたのが始まりだった。
必死に否定してもからかい続ける彼と意外にも会話が続き、今では図書室で彼と楽しく話しながら設計するのが日課になった。