クールな黒淵くんは甘い。
「巻き込まれ体質が嫌だって言ってたのに、誘拐されたいなんて、ヘイワボケか?」
「別にそういうことじゃない」
「あーそれとも、」
脚を下ろした彼が対面に座っていた私の方に来る。私の肩に腕を回して言った。
「黒淵に構われたいんだ。」
ぎくりとしてしまった自分がいる。それは峡為くんと距離が近くてびっくりしたのか、その言葉が本当だと思ったからか。
そんなこと考えたくなかった。
ん。と顔を近づけられると、改めて彼の顔の良さに気がついた。鼻は高いし、まつ毛は長い。回された腕にもかなり筋肉がついているのが分かった。
でも、私は黒淵くんの方が……
「……近い。離れて。」
「えーつれないな〜。」
そう言って頭を掴むと、あっさりと彼は離れた。
「でも黒淵はさ、春華に優しい。とか春華に気があるっぽい感じじゃないんだろ?」
「うん……まあそうだけど。」
「じゃあいいじゃん。付き合ったりしないって。」
そう言って優しく笑うと、そのまま鞄を手にすると、そのまま扉へと行ってしまう。
「俺きょうはもう帰るね〜。」
「え……、あ…うん。」
「何?もっといてほしい?」
「……はやく帰って。」
「はーい。」
じゃーねなんて軽い口調で彼は図書室から出て行った。