クールな黒淵くんは甘い。

私は胸が苦しくなるのを抑えた。
仕方ない…この書類は黒淵くんに提出しないといけないから。


重い脚を動かして、奥の机で何かの書類を見る彼の元に向かう。
きっと今は学園祭間近だから、仕事が多いんだろう。


「黒淵くん、これ。うちのクラスの。」


捻り出した声は短かったくど、意外としっかりと出せた。


「……わかった。」


俯いたままだったから、黒淵くんが私の顔を見たのか分からなかった。

彼の手が見えて、書類が彼の元に行く。
この手も、今は春華ちゃんのものだと思うと、嫉妬に狂いそで自分が怖かった。



「じゃ、失礼しました。あ、黒淵くんあとおめでとう。」



なんだか、これが春華ちゃんと付き合った黒淵くんと話す最後になりそうで、私なりにひと報いしてやったつもりだった。

彼は何も言わなかったから分からなかったけど、意図はわかったのかな。

どーせ、クールな顔してるんでしょ。



「柚衣」
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