クールな黒淵くんは甘い。
その後ろにはいつもスーツの黒淵くんが黒い着物姿で辺りを警戒した顔で立っていた。
「………っ。」
いつもとは違う彼をかっこいいと思ってしまう自分がいた。
まだ…私……黒淵くんのことが……。
「春華ちゃん浴衣似合ってる可愛い!」
「ぇ……ありがとう。」
「ねえねえ春華ちゃん!黒淵くんに向けて愛の告白とかしてくれない?そしたらうちのクラス絶対優勝できると思うんだよね。」
「え…えっと……それは……。」
「あ、黒淵くんから春華ちゃんにでも良いよ!」
「………」
沢山の人にいっせいに話しかけられる春華ちゃんと、当然のようにスルーする黒淵くん。さすがクール黒淵冷。
そんな様子をなんとも言えない感情で見ていると、パチリと、春華ちゃんの丸くて可愛い目と目があった。
そのまま口パクで何かを伝えられる。
『こ っ ち き て』?
「わ、私トイレ!冷くんは待ってて。」
「わかった。」
集団をかき分けていく春華ちゃん。はっと思い、アキちゃんを見ると、
「行ってきな。」
と言われた。なんかアキちゃんイケメン。
そのまま春華ちゃんを追いかけるように私は走った。