クールな黒淵くんは甘い。


「うう……。」

誰かに目隠しを取られ、急な明るさに目がチカチカする。

だんだんとクリアになった視界に最初に映ったのはスーツに身を包んだ彼、黒淵 冷(くろふち れい)の不機嫌そうな顔と私を見下ろす目で。

私は冷や汗をかく。


「きょ、今日はお日柄もよく…」


「何回目だ?」


「……え?」


「今回で何回目だ?」


「さ、36回目です。」


今だに手と足は縛られて転がされたままの私は必死に見上げてそう答える。

首が痛い……。


「……はぁ。もういい。帰るぞ。」

「え、ちょ。帰るならこれ解いてって、きゃっ。」


お腹と足の方に手を通され、そのままお姫様抱っこに……なんてことはなく、彼の肩に乗せられ、俵担ぎにされる。


「あわわわ、ちょっと…私高いとこ無理!」


「あ?いつもの俺の視界だアホ。」


「じゃあ歩くから降ろしてくだ…さい。」


「そうやってまた拐われたらどうすんだよ。」


180センチはある彼は、私と30センチの身長差はある。


うう…視界がぐらぐらする…。

黒淵くんはそのまま私を抱えて、外れたドア(恐らく黒淵くんが侵入の際ぶち破った)から部屋を後にした。

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