クールな黒淵くんは甘い。

「はぁっ……はぁ……。」

春華ちゃんを追いかけて進んだ先は学園裏にある花壇だった。

 

「ごめんね。秋華ちゃん。いきなり。」

「うん……」


浴衣の裾を直しながら、春華ちゃんにならって、石段に座る。


「……………。」


流れる沈黙。文化祭の作業の時少し話したぐらいだったし、こうして二人きりになるのは初めてのことだった。

どうしよう、何か話した方が…。しかし次の瞬間、彼女が口をひらいた。


「あのっ!秋華ちゃんてさ。冷くんのこと好き?」


え……。嫌な予感はしていたけれど、やっぱりこのことだよね。
黒淵冷くんの話。


「私、学園祭の最後に【屋上からの告白】で、冷くんに告白しようと思ってて。」


あれ、ということは……?


「まだ付き合ってないの?」


「うん。まだなの。」

じゃあなんで手繋いでたの…?とは自分の気持ちが漏れそうで聞けなかった。


「でも、でも秋華ちゃんが黒淵くんのことが好きなら、私は身をひこうと思っ「好きじゃないよ。」」


やっぱり春華ちゃんは良い子だ。真っ直ぐで優しい。私より多くのものを持っている。
きっと黒淵くんだって……。


だから、私が、

私が諦めなくちゃ。


「そ、そうなんだ。ごめん。何か変なこと聞いて。」

メガネを取っても、ちょっとあたふたしちゃう春華ちゃんは小動物のようだ。


「大丈夫。それに春華ちゃん。ちゃんと自分の気持ちを大切にしないとダメだよ。告白、頑張ってね。」


どの口が言ってるんだ、私は……。




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