クールな黒淵くんは甘い。

そのまま寮に戻ってからも、夜になっても、私は黒淵くんのあの言葉が頭から離れなかった。

学園長から住ように指定された寮部屋は広いけど、一人でいるにはいつも寂しい。


「アホすぎるせいだろ。うろちょろし過ぎなんだよ』

『SSSの仕事が増えるから言ってんだよ』


「っ…………。」

私は今回こそは黒淵くんに嫌われてしまったかもしれない。

そうだよね、こんなに迷惑かけてるし。
同棲だってほんとはすごく嫌なのかもしれない。

私ってほんとにどうしようもない奴だ。

そこまで考えたときガチャと玄関の方から扉が開く音が鳴った。
    

「あ…、お帰り黒淵くん…!?」


「……ん。」

私は帰ってきた黒淵くんの姿を見て悲鳴を上げそうになって寸前のところでおさえた。

頬やスーツ、ズボンまであらゆるところに血がたくさんついていた。前までも血をつけてくることはあったけど、ここまで大惨事なことはなかった。

何度見ても血は苦手で慣れない私は少し手が震えた。


「く…黒淵くん……右腕……!」


特に左手は特に血が滲んでいた。
こんなところに返り血はたくさんつかない。


「手当て…、手当てしないと……。」
 

「いらない。」


「な…なんで。」


「自分でできる。お前はもう寝ろ。」

黒淵くんはアドレナリンが出ているせいか、いつもよりもっと鋭くて冷たい。


「…何があったの?」


「お前には関係ない。」


そのまま黒淵くんは背中を向けてお風呂場に向かってしまった。


「関係ない……か。」

とほとぼと歩いてベッドに寝転ぶ。枕が冷たいと思ったら涙が出ていた。

こんな時、物語のヒロインならお風呂場まで追いかけるのかも。
でも普通、『好きな人』にあんな冷たい目で見られたらできないよ。
 
そうです。
私、秋華 柚衣は、黒淵くんが好きなんです。


そのまま寝ようとしたけど、悔しくて嫌われたかもしれないと怖くて、なかなか寝付けなかった。




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