麻衣ロード、そのイカレた軌跡❺/二つの情念、炎上す
その8
多美代



午後5時30分…

それは、おけいをバイクのうしろに乗せ、火の玉川原に向かう途中だった

「ブーッ、ブーッ!」

”あれ…?アカネのバイクだ…”

私は交差点前に停止した

「…多美ー!」

「おう…、やっぱりアカネだったか」

「大変だ!荒子総長の行方が掴めないんだ!」

「ええー!!どういうことだよ、アカネ!」

「私、恵川先輩に言いつかって、ルーカスに出向いてたんだ。相川先輩と落ち合う予定の荒子総長を一緒に迎えるようにって…」

「ああ、恵川先輩には聞いてた。で、どうしたんだ?」

「相川先輩には4時くらいにはルーカスに着くだろうって、昼前に連絡取ったらしいんだけど…。総長来ないんだよ、5時回っても…」

「…」

ここでおけいもこっちに寄ってきてね…

...


「…おけい、相川先輩が待ってるルーカスに荒子さん、まだ着いてないらしい…。ああ、アカネ、これが噂の横田さんだよ。おけい、こっち、特攻隊で一緒だった片山アカネ…」

「どうも…」

さすがにこんな時だけに、二人とも呑気のご挨拶って雰囲気じゃなかったわ…


...


「…それで、のん子先輩んとこに連絡したら…」

「どうしたんだ?」

「ちょうど巷にうわさが出回ってるって、南玉連合外部の人間から連絡が入ったとこだった…。それがさ…、荒子総長、敵に拉致されたかもって…」

「何ー!!」

私は血管が切れそうだったわ!


...


「おけい!」

「ああ、多美…、これって、南玉のみんな、どう捉えると思う?」

「…正直、昨日の今日だし、みんな動揺して不安になると思うよ。マズイわ、これ…。なあ、アカネ」

「うん。電話の向こうの恵川先輩、絶句してたしな。相川先輩はとにかくルーカスで待って、総長が来たらすぐのん子さん宅に連絡が入ることになってるから、今から帰って、そうなってればいいんだけど…」

アカネは俯いちゃったよ…


...


「片山さん、私たちも一緒に戻るよ。…多美、一旦、引き返そう。本郷サイドは情報操作をフル活用してるから、南玉本隊がどっしり構えてないと、奴らの思うままだ。ここで、ネガティブになったら負けだよ」

「よし、とにかくみんなのとこへ戻ろう」

なってこったい!

荒子総長…





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