笑わぬ聖女の結婚~私の笑顔を見たいがあまり、旦那さまがヤンデレ化しています~
そもそもこのところは、自分が甘い笑顔など送っていないことにも気がつかずリシャールはチッと舌打ちした。
「……それはつまり、閨をという意味でしょうか?」
彼女の口からそれが語られるとは思っておらず、リシャールは固まる。なんと言葉を返していいのかわからない。
アリッサは飄々とした様子で続ける。
「私などではなく、どうぞリシャールさまのお好きな女性を。私は形式だけの妻で構いません。聖女の仕事はしっかりこなしますから」
アリッサは大聖女だ。五大侯爵にとって、大聖女を娶ることは名誉であり、リシャールには彼女を大切にする理由がある。だが、実務面だけでいえばアリッサが毎日祈りを捧げさえすれば、その地位が正妻だろうと下働きだろうと王国に災厄が訪れることはない。彼女は侯爵夫人の地位に執着がないのだろう。
(いや、俺自身にもか)
リシャールのなかでプツンとなにかが切れ、仮面が完全にはがれ落ちた。
彼は椅子から立ちあがるとアリッサに近づく。彼女の頬を強い力でグッとつかみ強引に自分のほうを向かせた。冷たい怒気のにじむ瞳で、座ったまま呆然としている彼女を見おろす。
「そんなことは絶対に認めない。俺の妻は君なのだから」
リシャールはゆっくりと腰を折り、彼女に顔を近づける。
「お好きな女性を、と言ったね。俺の子を産むのはアリッサ、君だけだ」
唇が重なる。
「……それはつまり、閨をという意味でしょうか?」
彼女の口からそれが語られるとは思っておらず、リシャールは固まる。なんと言葉を返していいのかわからない。
アリッサは飄々とした様子で続ける。
「私などではなく、どうぞリシャールさまのお好きな女性を。私は形式だけの妻で構いません。聖女の仕事はしっかりこなしますから」
アリッサは大聖女だ。五大侯爵にとって、大聖女を娶ることは名誉であり、リシャールには彼女を大切にする理由がある。だが、実務面だけでいえばアリッサが毎日祈りを捧げさえすれば、その地位が正妻だろうと下働きだろうと王国に災厄が訪れることはない。彼女は侯爵夫人の地位に執着がないのだろう。
(いや、俺自身にもか)
リシャールのなかでプツンとなにかが切れ、仮面が完全にはがれ落ちた。
彼は椅子から立ちあがるとアリッサに近づく。彼女の頬を強い力でグッとつかみ強引に自分のほうを向かせた。冷たい怒気のにじむ瞳で、座ったまま呆然としている彼女を見おろす。
「そんなことは絶対に認めない。俺の妻は君なのだから」
リシャールはゆっくりと腰を折り、彼女に顔を近づける。
「お好きな女性を、と言ったね。俺の子を産むのはアリッサ、君だけだ」
唇が重なる。