笑わぬ聖女の結婚~私の笑顔を見たいがあまり、旦那さまがヤンデレ化しています~
アリッサと彼は昔、王都で一度だけ言葉を交わしたことがあった。田舎から出てきたばかりの彼女に、リシャールは励ましの言葉をくれた。それきり会うこともなく、漏れ伝え聞く彼のうわさに胸を弾ませることしかできなかったのだがーー。
どういう巡り合わせか、再び言葉を交わすことができた。それどころか、アリッサは今日から彼の住まうこの城で暮らすことになったのだ。
憧れの人を間近で拝むことのできる環境は、死ぬほどうれしい。誰も見ていない状況なら、無表情のまま小躍りしていたことだろう。
ただ、大きな問題がひとつ。たとえばこの城で侍女をするとかそういうことなら、アリッサは大喜びで受け入れて、その幸せをかみ締める。だが、彼女に与えられた使命は彼の妻になることなのだ。
(――無理、無理よ。リシャールさまの隣に立つ女性が蝋人形と呼ばれるこの私だなんて! 彼の美貌を損なうだけじゃないの)
ジリジリとアリッサは後退し、彼と距離を取る。そんな彼女の様子にリシャールは弱ったように眉尻をさげた。
「どうも嫌われてしまったようだね。まぁ、まるで身代わりのような結婚……喜ぶ女性がいるはずもないか」
アリッサと彼の結婚は、もちろん政略によるものだ。
どういう巡り合わせか、再び言葉を交わすことができた。それどころか、アリッサは今日から彼の住まうこの城で暮らすことになったのだ。
憧れの人を間近で拝むことのできる環境は、死ぬほどうれしい。誰も見ていない状況なら、無表情のまま小躍りしていたことだろう。
ただ、大きな問題がひとつ。たとえばこの城で侍女をするとかそういうことなら、アリッサは大喜びで受け入れて、その幸せをかみ締める。だが、彼女に与えられた使命は彼の妻になることなのだ。
(――無理、無理よ。リシャールさまの隣に立つ女性が蝋人形と呼ばれるこの私だなんて! 彼の美貌を損なうだけじゃないの)
ジリジリとアリッサは後退し、彼と距離を取る。そんな彼女の様子にリシャールは弱ったように眉尻をさげた。
「どうも嫌われてしまったようだね。まぁ、まるで身代わりのような結婚……喜ぶ女性がいるはずもないか」
アリッサと彼の結婚は、もちろん政略によるものだ。